孤独の群(for living.)

孤独の群-06帰りたい場所

 リャムがふと目を開けたら、誰かがじっと見つめている。カリン? いや、弟は寮の玄関で見送って、その後……。「ミ、ヤツカ……?」「おう、おはよ」「ここ、どこ……」「何、覚えてないわけ? ビョーインだよ、病院」「びょ……?」「全くさあ、何だよお…

孤独の群-05ヒトナミ展覧会

「なあ、リャム。今度の休み遊びに行こうぜ」「どこに?」「お前が行きたいところでいいよ、その辺は任せる」「誘った割に丸投げだな、ああでも一つ興味深い催しがあるんだ」 ミヤツカにそう言ってリャムは何かに想いを寄せるような、少しだけいつもよりうっ…

孤独の群-04アンカー

「僕は嫌だな」 あからさまな嫌悪感。たかが学校行事に対してそんな感情的な言葉をリャムから聞くとは思わなかった。国立創造研究学園最高学部一年、クラス別対抗合同陸上競技大会。いわゆる運動会は都市の暑さを考慮して、学年ごとに例年夏の雨季の前に開か…

孤独の群-03大人にはならない

「まあ! 今でも背が伸び続けているのねえ。もう二十歳も過ぎているんでしょう?」「はあ、飯食えば食うほどどこかしらでかくなるんすよ」 翌週末に健康診断があった。もうここ十年くらい風邪すらひかないミヤツカは看護師に逆にその丈夫さに驚かれながら基…

孤独の群-02友人の死

 国立創造研究学園最高学部、本年度初めての授業『基礎ヒトナミ概論』の時間にその男達はやって来た。よりにもよって最前列に座っているミヤツカに、赤い髪の男は馬鹿にするように黙って睨み目を逸らした。「グレッダ・リーン、こちらにおられるムトー学園最…

孤独の群-01アンドロイド

 この国において個人の欲望のままに『アンドロイド・ヒトナミ』を造るのは倫理違反である。彼らは自ら生殖能力を持たないため、製造は一部の研究者のみに託されていた、それが国立ヒトナミ研究所。 一つ忘れてはならないことは、ヒトナミは姿形は似ていても…